今のジャンプ漫画

近田鳶迩さんの「ジャンプ連続大ヒット検証」が大変興味深い。「週刊少年ジャンプは漫画家の余力を残さない、だから同じ漫画家が連続して大ヒットを飛ばすというケースが極めて少ない」という命題に対する検証として、主要作品を列挙していくというもので、コメント欄やトラックバックで多くの意見が寄せられている。さらにジャンプだけでなくサンデー漫画も列挙。さらに盛り上がりそうな勢いだ。続きを期待している。

http://d.hatena.ne.jp/enji/20050519
http://d.hatena.ne.jp/enji/20050520
http://d.hatena.ne.jp/enji/20050521

さて、鳶迩さんの検証とは論点がずれるが、以下ジャンプシステムについて思ったことを書き綴る。

サンデーやマガジンは人気がある限り漫画家のプラン通りに漫画を描かせてもらえ、どんなに人気があろうとも終わらせるべき時に終わらせてもらえる。一方、ジャンプの漫画は人気がある限り終わらせてもらえない。したがって、予定通りきっちりと仕事をやり遂げた非ジャンプ作家は次作への余力がまだあるが、ジャンプの作家は全てを搾り出し抜け殻状態になってしまう。編集部が漫画あるいは作家を「作品」ととらえるか「商品」ととらえるかの違いと言いかえてもよい。

結果としてジャンプシステムは多くのヒット作を生み出したが同時に作家に重すぎるほどの負担を強いた。ある作家は二度とヒットは飛ばせなくなり、ある作家は他社に移籍し……かくしてジャンプシステムは崩壊し、いわゆるジャンプ黄金期は終焉を迎える。

作家を壊したりあるいは逃がしたりすることが続いたジャンプ方向転換を強いられた。無駄な引き伸ばしを減らしたり、定期休載を取り入れたり等、作家を「商品」扱いすることが格段に減った。

読者の求める作画レベルが上がってきており、それにともない作家側の負担が強まり、結果として週刊連載を続けるのが難しくなってきていることも関係あるのだろう……などと思っていたら、海燕さんのところで興味深い考察を発見。

http://d.hatena.ne.jp/kaien/20050522/p2

なるほど、毎週描かれない代わりに増ページによる掲載というケースが出てきているのか。
週刊連載のスタイルが崩れてきているのは確かだろう。

ただ、「商品」という視点で見た場合、このようなこともいえないか。

ジャンプは黄金期が終わって以降売上部数が減り続けている。その一方で単行本売上は上り調子だ。それならば、収入増のターゲットを単行本にシフトすればいい。
お気に入りの漫画が休載だからジャンプ本誌を買うのをやめる。雑誌の部数にこだわっていた頃はこれを恐れ、休載をなるべくさせないようにしていた。だが今は、以前のようにすることによっても部数はたいして増えないのだ。それならば、単行本の売上を伸ばすべきだ。このような戦略が見え隠れしてならない。読者の価値観が、雑誌型読み捨て漫画から単行本型保存漫画へと移行したのだろう。

いずれにせよ、このやり方でジャンプ漫画に黄金期バブルがはじけて以降なかった勢いが出てきたように思える。