浅田次郎『王妃の館(下)』
- 作者: 浅田次郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/06/18
- メディア: 文庫
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上下巻とも2004年6月購入。ほぼ1年間の放置。
倒産寸前の旅行会社が仕組んだツアーの二重売り。一方は一人200万、二人で300万もする超高額の「光(ポジ)」、他方は20万を切る安値の「影(ネガ)」。旅行会社の朝霞玲子と戸川光男は二つのツアーのブッキングがバレないようにいろいろとたくらむが……
このツアーの面々が一風変わっている。簡単にまとめると、
「光」……①上司と不倫の末、会社をリストラされたOL
②ベストセラー作家とその担当編集者
③借金苦に悩み心中を図ろうとする中年夫婦
④バブル崩壊後に財を成した不動産王とその恋人
「影」……①職場の堕落っぷりに失望し、職を辞した元警察官
②フランス人の愛人を探すオカマ
③カード詐欺師の夫婦
④戦争経験者の元教員とその妻
⑤ベストセラー作家を追ってフランスへ来た編集者二人
といった次第。これらの人間が絡んで最後は大団円。いかにも予定調和的な話。社会生活や人間関係に疲れた人間が普段の生活を離れたバカンスの地で癒される、という構図は出世作『プリズンホテル』シリーズとまったく同じで出来としても先行作の方が優れている陽に思える。それでも私はこの手の人情話に弱いのでほろりとさせられた。
大金を払うことのできる「光」とそういうことは出来ない「影」。だが、影のメンバーが光を救ったりもしている。そもそも、「光には影がなければおかしいし、光あってこその影なのだから」。
生きる力を与えてくれる作品。