山口雅也『チャット隠れ鬼』
- 作者: 山口雅也
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2005/05/20
- メディア: 単行本
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インターネットで起きる犯罪を監視する組織、サイバーエンジェル。神名川学院の気弱な教師、祭戸浩実はそのサイバー・エンジェルに任命されることに。当初は勝手のわからないチャットでの対応に戸惑うが、やがてそのチャットにどっぷりとはまり込み、ついにはネカマまで演じてしまう。そんな中、祭戸はチャット上で幼女に対する犯罪を行おうとしてる人物の存在に気づく……
アヴァンギャルドな作風で知られる山口雅也が今回選んだ題材はネット犯罪。それを解決していく上で、PCの知識よりもアナログな知識が活かされたりする部分があったりして面白い。
チャットという特殊空間ではミステリで言うところの「フーダニット」が異質な変化を遂げる。そこでは通常の犯人探しの「who」ではなく、ハンドルネームに隠れた実際の人物を探る上での「who」が重要になる。。容疑者はすぐに浮かぶが、ではそのハンドルネームを名乗るものはいったい誰なのか? 男か女か大人か子供かそれとも……
コミュニケーションとは本来人と人がじかに向き合い、目を見て話をすることで成立する。ネットによるそれは一見便利に思えるが、相手の真の姿は見えてこない。画面の向こうの人物――「中の人」は誰なのかはわからない。ネットを用いたコミュニケーションとはそんな状態でのコミュニケーションなのだ。
「中の人などいない」とはよく言ったものだ。