柳広司『黄金の灰』

黄金の灰 (創元推理文庫)

黄金の灰 (創元推理文庫)

 2006年11月購入。3年10ヶ月の放置。歴史上の人物を用いたミステリを数多く手がけている柳広司のデビュー作。本書ではトロイア発掘で知られるシュリーマンを主役としている。事件は発掘中に発見された黄金の消失から始まる。黄金の行方を追ううちに発見された不審な死体、そして密室殺人事件の発生、と本格ミステリの王道ともいえるストーリー、そして完結に至る道筋はデビュー作とは思えぬほど完成度が高い。歴史人物も単にストーリーの駒として用いているのでなく、その時代風景との関わりや文脈でもって肉付けされており、きちんと意味があるのもよい。歴史ミステリの良作である。