エドモン・ロスタン『シラノ・ド・ベルジュラック』

シラノ・ド・ベルジュラック (光文社古典新訳文庫)

シラノ・ド・ベルジュラック (光文社古典新訳文庫)

 2008年11月購入。1年10ヶ月の放置。光文社の古典新訳シリーズからの一冊であるが、なにぶん不勉強の身ゆえ旧訳は未読なので比較はできません。17世紀フランス、詩人にして軍人であるガスコンのシラノ・ド・ベルジュラックを主人公にした戯曲。剣の腕もたち、詩人として優れたシラノであるが、デカ鼻の持ち主であるゆえ非モテの身で、自身もその鼻にコンプレックスを持っていた。そんなシラノが密かに恋心をいだいていたのが従妹のロクサーヌだ。しかし彼女はイケメンのクリスチャンに惹かれていた。クリスチャンもまた彼女に惚れてしまうのだが、彼には彼女の気を惹くような洒落た恋詩を作ることができなかった。ロクサーヌの気持ちを知ったシラノはクリスチャンの代筆で詩を作り、二人の恋の手助けをするのだが……というストーリーだ。クリスチャンの外見のみならず詩才にもぞっこんとなったロクサーヌと、自分とは違う中身を愛されていることに悩むクリスチャン、そして忍ぶ恋を貫くシラノという三人の恋愛関係の行末が劇的な演出で描かれており、長く上演される世界的戯曲となったのもうなずける出来である。訳も分かりやすく、また注も詳細で非常に読みやすかったです。