樋口有介『不良少女』

不良少女 (創元推理文庫)

不良少女 (創元推理文庫)

 2007年11月購入。2年10ヶ月の放置。柚木草平シリーズ作品4篇を集めた短編集。発表年が1995年から2001年と幅があるのに対し、柚木の年齢は38歳と常に一定である。それゆえ描かれる時代風景には若干の差異が見られる。とはいえ女性に接する柚木の姿勢は驚くほどブレない。「秋の手紙」では恋人関係にある吉島冴子の従姪にあたる少女に届けられた不審な手紙について調査し、「薔薇虫」では金持ちの家で飼われていた飼い犬の不審死を調べつつ、その家の娘と仲良くなる。「不良少女」では偶然万引き現場を発見した女子高生を咎めたところ、その少女に付きまとわれるようになる。「スペインの海」では飲み屋で知り合った美女の仕事上でのトラブル解決を依頼される。時にキザで瀟洒な台詞で以て女性を口説いたり、時に年端も行かない少女の突飛な言動に振り回されたり、といった柚木と女性たちのやりとりはシリーズのお約束で、マンネリでありつつもファンを心地良く楽しませてくれる。なお、巻末には杉江松恋によるシリーズに登場する女性キャラリストが収録されている。すべてが口説いたキャラではないにせよ、その人数たるや壮観である。