仁木英之『胡蝶の失くし物 僕僕先生』

胡蝶の失くし物―僕僕先生

胡蝶の失くし物―僕僕先生

 2009年3月購入。1年半の放置。シリーズ第3弾。巻を重ねるにつれ人数の増えていく僕僕先生一行だが、今巻では闇の暗殺集団<胡蝶>の一員である劉欣が加わる。彼は最初、僕僕先生を殺すために使わされてのだが、紆余曲折あって彼女らと同行するようになる。飄々としながらも恐ろしい殺し屋との格の違いを見せる仙人・僕僕先生の姿も見所の一つであるが、本書では彼女とその弟子である王弁の関係に横たわる障壁に強くスポットが当てられている。シリーズ読者には言うまでもないが、本シリーズでは長寿の持ち主である美少女仙人に恋慕の情を抱く人間、という関係が根幹にある。師匠の方も弟子を好ましく思っているのであるが、仙人/人間の壁は決して越えることができないそしてそのことに対して師匠の方はともかく、弟子の方は心穏やかにはいられない。この悩みはともすればコンプレックスにも結びつくのだが、このたび新登場した殺し屋・劉欣は仙人になる資質を有する仙骨の持ち主であった。自分が決して超えることのできない仙人と人間の壁を超えることのできる男の登場は今後の一行に影響を及ぼしそうであるが、僕僕先生の飄然とした態度が重い空気を払ってくれそうでもある。いずれにせよ、次巻以降に注目したい。