桜庭一樹『製鉄天使』

製鉄天使

製鉄天使

 2009年10月購入。11ヶ月の放置。『赤朽葉家の伝説』のスピンオフ作品である。そもそもは2007年に開催されたMYSCON8昼の部、大森望による作者インタビューが刊行のきっかけで、その際のニュアンスだと「鉄を自在に操る少女と紙飛行機を武器にする少女の対決」といったものであった。実際本書にはその要素が取り入れられているが、能力バトル的な物語に仕上がっているわけではない。主人公の赤緑豆小豆は中学入学後にレディースを結成し、中国地方の制圧を目指す。その過程で仲間との友情を育んだり恋をしたりして、成長していく――本書はまさに桜庭一樹の得意とする少女の成長物語である。そして同時に少女という時代の終わり、少女性の喪失を描いた話でもある。その過程は自分たちの勢力を伸ばしていく、という非常に明確な形で提示されており、桜庭一樹という作家を考える上で分かりやすい作品であるといえる。