西村京太郎『新版 名探偵なんか怖くない』

新版 名探偵なんか怖くない (講談社文庫)

新版 名探偵なんか怖くない (講談社文庫)

 2006年7月購入。4年2ヶ月の放置。大富豪の佐藤大造が私財を投げ出して三億円事件を再現させた。同様の環境を作り出すことによって、犯人の思考をトレースし、未解決となった元の事件を解決させる、という意図あってのことだ。その環境下で推理を巡らせるのはクイーン、ポワロ、メグレ、明智という名探偵の面々であった。
 ユニークな状況設定に加え、名探偵共演というミーハーでありながらも豪華な趣向は、否が応にも本格ミステリファンの興味をひきつけるであろう。加えて中盤でみせる意外性と終盤における解決、そして明かされる意外な真相という展開はテンポがよく、読者を飽きさせない。用意された四人の名探偵それぞれに見せ場があり、各探偵のファンもそれなりに納得出来るようになっている。
 なお、巻末には綾辻行人との対談が用意されている。おそらく、新本格以降のミステリファンに対する釣り餌であったのだろうが、シリーズの続編の新版が刊行されなかったところを見ると、釣果は芳しくなかったようだ。