古龍『マーベラス・ツインズ契4 貴公子の涙』

マーベラス・ツインズ契 (4)貴公子の涙 (GAMECITY文庫)

マーベラス・ツインズ契 (4)貴公子の涙 (GAMECITY文庫)

 2008年12月購入。1年8ヶ月の放置。小魚児を殺す理由を師から問いただそうとする花無缺と育ての親である「十大悪人」たちを追う小魚児。二転三転の末、舞台は「十二星相」最強の男・魏無牙のいる亀山へ。優れた武芸を持ちながら馬鹿正直すぎる花無缺は思わぬところで足元を救われ死地に陥る。また、小魚児は魏無牙の罠に陥りながらもどうにか切り抜け、蘇桜という少女に出会う――
 ストーリーは相変わらず早いテンポでいろいろな方向へ転がりながら進んでいく。これまで対小魚児、という立場で一貫していた時とは違い、無敵を誇っていた花無缺にも弱点らしきところが見られるようになるが、読者にはそれがかえって彼をより魅力的なキャラクターとして映るであろう。また、小魚児は相変わらずであるが、新たに登場した少女・蘇桜は彼に影響を何らかの与えそうである。先がますます楽しみである。
 しかし、残念だが――まことに残念だが書籍という形での刊行は今巻を以て終了となる。個人的にはこのシリーズは邦訳された古龍作品でもトップクラスの面白さであり、現在我が国で刊行されている他の翻訳作品と比べて内容的に劣るものとは思わない。贔屓の引き倒しであることを承知のうえで暴言を吐くのであれば、多少採算ベースで泣くことがあっても続巻を刊行する価値はあると思う。少なくとも、不況とか読書人口の減少を理由に簡単に諦めてしまうには惜しすぎる。2010年8月現在、日本での続編である『マーベラス・ツインズ絆(1)秘められた思い』は光栄の携帯サイトGAMECITY文庫オンラインにて無料で(!)読むことが可能だが、それ以降続編が掲載されることはなく、予定すらも発表されていない。思えば、早稲田出版の「陸小鳳」シリーズもシリーズ全巻刊行するはずが、三巻でストップし、以降音沙汰なしである。無縁と言わざるをえない。