篠田真由美『アルカディアの魔女 北斗学園七不思議3』

 2009年9月購入。11ヶ月の放置。北斗学園に伝わる七不思議を調べているうちに、大人たちによる学園を手中に収めんとする権力闘争に巻き込まれたアキ、ハル、タモツの三人。今巻においてもまた、彼らを自分たちの駒にしようと接触してくる者がいる。創立者の一人であるエリザベータの血をひく<魔女>古宮杏奈だ。一方でタモツは学校を辞めると言い出し、アキとハルは意見の食い違いで対立する。そんな中、彼らの耳に奇妙な噂が届く。学園の森に妖精が棲み、宴を開いているらしい。
 本シリーズの共通テーマと思われる大人との壁にぶつかる少年のもどかしさ、という部分は丁寧に書けている。今後待ち受けているであろうこの壁を破るという展開が訪れれば、少年の成長というカタルシスが劇的に描かれるであろう。そこまでの溜めという意味では効果的ではあるが、前巻からの進展が乏しいゆえシリーズ的位置づけは微妙と言わざるをえない。少年たちの対立と和解もあっさりとしているので演出としては弱い。テーマ上の進展が少ないのであればむしろそちらの方面をもっと盛り上げてほしかった。