古龍『マーベラス・ツインズ2 地下宮殿の秘密』

マーベラス・ツインズ (2)地下宮殿の秘密 (GAME CITY文庫 こ 2-2)

マーベラス・ツインズ (2)地下宮殿の秘密 (GAME CITY文庫 こ 2-2)

 2008年3月購入。2年5ヶ月の放置。花無缺の手から逃れた小魚児は、紆余曲折を経て謎の地下宮殿へと辿りつく。そこでの冒険と出会いが本巻の読みどころである。特に、彼と手錠でつながれ行動を共にすることとなる江玉郎はシリーズにおける重要人物の一人だ。「十大悪人」の一人で博打狂いの軒轅三光や、男を惑わす妖女簫咪咪、「十二星相」の申、献果神君など、前巻に引き続き今巻にも魅力的な人物が多く登場する。その中にあって江玉郎とその父江別鶴の存在感はひときわ大きい。そしてその位置づけは、主人公小魚児の宿敵になる。無論、物語中における彼の最大のライバルは花無缺である。しかしその花無缺が人品優れた好漢で、敵であるにしても小魚児にとっても読者にとっても印象は悪くない、いわば相対的悪役であるのに対し、江親子は絶対的悪役として存在する。小魚児と花無缺、江玉郎というこの三者の関係とその変化が本シリーズの面白さの要素であり、本書二巻に至りついにその要素が出揃ったといえる。
 なお、小魚児・花無缺・江玉郎は同年代の少年であり、彼らのキャクターを確立させる作者の手腕はすばらしい。現段階において主人公小魚児はどちらかというと悪漢的魅力が強く、対して花無缺は君子の風雨格を感じさせる超絶イケメンだ。単純に善悪という観点で見ると主人公のほうが分が悪い。一方、江玉郎は裏のある小狡い小人物といった体で、やはり善悪という観点で比較すると小魚児の方が健全だ。また、あまりに生真面目な花無缺に比べると小魚児は愛嬌がある。こうやって主要三者の性格を上手く書き分けることにより、それぞれの魅力を一層引き立てることになる。殊に、主人公の位置づけは善の最端にいる花無缺と逆の端に位置する江玉郎との間にあって絶妙な位置にいるといってよい。キャラ立てのお手本のような作品である。