古龍『マーベラス・ツインズ1 謎の宝の地図』
マーベラス・ツインズ (1)謎の宝の地図 (GAMECITY文庫)
- 作者: 古龍,藤田香,川合章子
- 出版社/メーカー: 光栄
- 発売日: 2008/01/24
- メディア: 文庫
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次から次へと魅力的なキャラクターが怒涛のごとく登場し、ストーリーはテンポよく進んでいく。性格のきついドS美女の小仙女・張菁や彼女の友人で暗器の使い手・慕容九妹、それぞれ十二支の動物にちなんだ特徴のある「十二星相」たちに命を狙われる小魚児の武器は「十大悪人」仕込みの悪知恵である――こう書くと、小魚児は小憎らしい男のようであるが、愛嬌たっぷりの言動は読み手にとってむしろ好ましいものであり、まことに魅力的な主人公であるといえる。これは作中の登場人物にとっても同様であるようで、鉄心蘭という彼を慕う少女がいたり、あるいは義賊である黒蜘蛛なる人物が彼と義兄弟の契りを結びたがったりと、様々な人物を惹きつけてやまない。後半は彼のライバルであるイケメン好少年・花無缺が登場し、いよいよ盛り上がるというところで終了。続きが実に楽しみな一冊である。
なお、本書の原題は『絶代双驕』。読み手の想像力を刺激する好タイトルで、邦訳版もこちらで問題ないと思われる。また、漢字のイメージ喚起力を活かした表現も、武侠小説の魅力の一つであろう。にもかかわらず、『マーベラス・ツインズ』などとベタな英訳を採用したのはいかがなものか。カタカナタイトルのほうが日本読者に馴染み易との考えであるなら、武侠小説ファンは舐められたものだ。世紀の愚訳『コンドルヒーロー*1』から何も学んでいない。