2009年8月購入。11ヶ月の放置。
鯨統一郎は歴史上の人物を登場させたミステリを数多く発表している。本書はその中の一冊で、タイトルにあるように探偵役は
空海。なお、ワトソン役には
橘逸勢を据えている。七つの小エピソードが語られているのだが、いずれも
空海がトリックを用いて奇蹟を演出し、人々を救う、という話になっている。言葉を悪くすれば人々を欺いているわけで、ミステリレベルで語るならばこれは探偵役というよりもむしろ犯人役の所業ということになる。だが観点を変えれば奇蹟を演出することによって問題を解決しているわけで、これは探偵役の分担するところだ。したがって、本書の
空海は探偵役と犯人役を兼ねた立ち位置にあるといえる。なお、
空海、
橘逸勢ときたからラストは
嵯峨天皇が登場するかと思ったらそんなことはありませんでした。