はやみねかおる『ギヤマン壺の謎』『徳利長屋の怪』

 夢水清志郎シリーズの番外編。『ギヤマン壺の謎』は2009年7月購入。1年の放置。『徳利長屋の怪』は2010年1月購入。半年の放置。
 『ギヤマン壺の謎』冒頭の舞台は出島で、密室状態にある蔵から消えたギヤマンの壺の謎を夢水清志郎左右衛門が解き明かす。その後夢水は江戸へ向かうのだが、道中凄腕の侍・巧之介と出会う。二人は江戸に到着すると、亜衣たち三姉妹のいる徳利長屋に落ち着くことに。『徳利長屋の怪』では江戸での出来事が語られる。怪盗の噂や巧之介にも劣らぬ剣の使い手と出会ったりしながら、ちょっとした謎を解決する暮らし。しかし江戸の町は薩長と幕府の対立で戦火に染まろうとしていた……
 登場する謎とその解決法といったミステリ的趣向に関しては時代設定にそれなりの意味を見いだせる。とはいえ本書をあえて夢水シリーズとして発表する必然性はない。おそらくは作者の遊び心故で、野暮な詮索はしなくてもよいであろう。シリーズのファンは夢水と新選組勝海舟西郷隆盛といった幕末の著名人の絡みを素直に楽しむのが吉。