馳星周『トーキョー・バビロン』

トーキョー・バビロン

トーキョー・バビロン

 2006年4月購入。4年3ヶ月の放置。主たる登場人物は四人。ITバブルの波に乗って企業し、大儲けしたものの破産して莫大な借金を背負ってしまった宮前佳史。その宮前の学生時代の仲間で、ヤクザのフロント企業に務める稗田睦月。中堅金融会社で暴力団との付き合いやトラブル処理を担当している小久保光之。過度の節酒で体をおかしくした売れっ子キャバ嬢の柳町美和。彼ら四人は小久保の務める会社「ハピネス」から大金を騙し取ろうと画策する。しかしながらお互い相手を出しぬいて自分だけが大金をせしめようと騙し合いを始める――
 四者四様の思惑が絡み合うコンゲームが本書の売りで、馳星周の得意とする闇世界での舞台としたノワールとはいささか異なり、暴力シーンは意外と少ない。したがって従来の馳星周色を期待する読者には物足りない醸しれない。逆にあまり暴力的なのはきつすぎる、というタイプの読者にはマイルドに読み進めるであろう。ただし、あくまでベースは馳星周のそれであるので、そこはあしからず。