倉阪鬼一郎『火盗改香坂主税 風斬り』

 2009年9月購入。10ヶ月の放置。江戸の火盗改を務める香坂主税は町に注進箱を設置し、町人からの訴えを聞き入れていた。その香坂の活躍を描くシリーズ第二弾。注進箱に投げ入れられた、香坂に対する暗号めいた挑戦状に対する「風斬り」。偶然知り合った町娘の母親を探す「返り花一輪」。殺された配下の同心の敵討ちをする「本郷燕返し」。謎の火付け紫頭巾の正体を探る「深川紫頭巾」。注進箱の依頼により妻を惨殺した相手を成敗する「思いの箱」。以上五編。人情話あり達人同士の活劇あり、人間消失の謎解き話あり、と小品ぞろいながらもバラエティに富んだ短編集といえる。ミステリやホラーで作者を知る読者にすれば、別の一面も知ることができる。