辻真先『改訂・受験殺人事件』

改訂・受験殺人事件 (創元推理文庫)

改訂・受験殺人事件 (創元推理文庫)

 2004年8月購入。5年11ヶ月の放置。ポテトこと牧薩次とスーパーこと可能キリコのコンビが活躍するシリーズの第三弾。二人の通う学校で成績優秀な生徒が屋上から飛び降りた。だが、その時は死体が見当たらず、数時間後に発見されるのだった。二人は事件を調べ始めるのだが、被害者の関係者が新たに殺害されてしまう……
 ポテトとスーパー、それぞれが交互に手記を書くことにより、二つの視点で物語は進んでいく。それは推理合戦のごとく進行していき、やがて二人はそれぞれ別々の犯人を推測する、という展開で読者を飽きさせない趣向となっている。加えて用意されたイベントはサクサクと消化され、非常にテンポよく読み進められる。また、冒頭に犯人よる「探偵役の二人は犯人の指摘を誤った」という、まことに挑発的な手記が提示されており、これが最後の最後まで読者の興味を惹きつける要因となっている。その種明かしは現在の本格ミステリ的視点で見るとさほど珍しいものではないのだが、作者らしい稚気にあふれたものとなっている。