芦辺拓『和時計の館の殺人』

和時計の館(やかた)の殺人 (カッパ・ノベルス)

和時計の館(やかた)の殺人 (カッパ・ノベルス)

 2000年7月の購入。9年11ヶ月の放置。田舎の名家である天知家の主人が亡くなった。弁護士の森江春策は遺族への遺言を公開する、という役目を授かった。森江が訪れた和時計が多数収集された館を舞台で巻き起こる殺人事件。容疑者である遺族たちは仲が良いとは決して言えない関係にあったし、その中には顔面を包帯で覆った胡散臭い者もいた。彼らの不和には過去の因縁が絡んでいるようで……
 舞台設定はいかにも本格厨が食いつきそうなものであり、実際彼らを喜ばすかのような展開で進んでいく。謎解きシーンなどはあの名探偵のオマージュそのものである。こってりとした道具立ての割にボリュームはさほどでもなく、あっさり読める点が、この手の作風を好む読者にしてみれば物足りないではないが、まずは需要を満足させてくれるであろう一冊。