海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』

ジェネラル・ルージュの凱旋

ジェネラル・ルージュの凱旋

 2007年4月購入。3年2ヶ月の放置。シリーズ前作である『ナイチンゲールの沈黙』と同時期に起きた、救命救急センター部長・速水晃一による特定業者との癒着疑惑をめぐる問題を扱った一冊。「救命医療に必要な費用と現状」というテーマに則ってぶれずに進行するストーリーは読み手に非常に優しい。加えて、極端に個性化された登場人物たちもそれに拍車をかけているといえる。
 反面、行き過ぎた他キャラ造形は、テーマよりもそちらにのみ読者の興味がより過ぎてしまうし、また、戯画化されることによって現実的な問題が浮いて軽佻なものに見えてきてしまうというマイナス面も見受けられる。主人公側に肩入れされすぎた展開によって、対立する人物がいかにもな悪役と化してしまっており、テーマに反して世界観が現実と乖離してしまっている点も気になる。
 とはいえ、これら欠点と思える部分はエンタメ的観点、すなわち純粋に速水や白鳥、田口といった主人公サイドに感情移入して読む上ではからみればむしろプラスとも成り得る。シリーズものの第三弾ということでもあるし、素直に主人公たちの活躍を楽しみましょう。