霞流一『ロング・ドッグ・バイ』

ロング・ドッグ・バイ (ミステリーYA!)

ロング・ドッグ・バイ (ミステリーYA!)

 2009年4月購入。10ヶ月の放置。本書は主人公である犬のアローの視点で語られる。幼犬のポンタから依頼を受けた「犬の銅像前に突如生えたゴボウの謎」を解決せんとするアローであるが、調査のさなかに別の噂が舞い込んでくる。街の英雄であった犬・レノの幽霊が出没するという。アローは仲間の犬たちとともに、噂の真相を探るのだが……
 個性豊かな犬たちによる冒険は愉快に読めるし、臆病な幼犬を勇気づけるエピソードも心温まるもので、児童向けレーベルとしてはなかなかの良作である。しかし、そのレーベルを意識したのか、お得意のバカミステイストは自重されているので、作者のファンにしてみれば残念なところ。また、犬ミステリならではの「嗅覚を前提とした密室」の構成は非常に面白いものの、アイデアの掘り下げといった点では物足りない。とはいえ、キャラクターは魅力的なのでギャグとミステリ要素、これらの密度をもっと濃くした続編を期待したい。