はやみねかおる『機巧館のかぞえ唄』

 2009年1月購入。1年の放置。子ども向けの本格ミステリ入門書ともいうべき夢水シリーズであるが、6作目となる本書は作中作の登場するメタ志向の強い作品となっている。作中における現実/虚構の境界があいまいになり、読み手の酩酊感が増していく――メタ・ミステリの読みどころの一つはこの点にあるが、やりすぎるといたずらに複雑になってしまうこの趣向はミステリ初心者である子ども向けのものであるとは決して言い難い。しかし、これを子どもにも読みやすいさじ加減で扱っているので、読みにくさはない。必然、ミステリオタの欲する酩酊感は些少なものになってしまっているが、それを望むのは当然ないものねだりである。あいかわらず児童向けミステリの好作品に仕上がっている。