真瀬もと『キューピッドの涙盗難事件 ベイカー街少年探偵団ジャーナル』

 2007年9月購入。2年2ヶ月の放置。シャーロック・ホームズパスティーシュジュブナイルでやりましょう、という試み。本書は本来の語り手であるワトソンはホームズのもとを離れ渡米してしまっており、代わりに彼の手足となって情報を集める少年がその役を勤める、という体裁をとっている。レーベル向け読者に合わせたのであろうし、ホームズを用いた少年探偵団ものをやろう、という作者の意図も明白だ。一方であとがきや略歴にから察するに作者はシャーロキアンでもあるらしい。物語本編からも細部に対するこだわりが感じられる。だが、物語上少年たちは単なる狂言回しの役に甘んじてしまっており、おいしいところはホームズの総取りだ。結局このこと自体は少年探偵団ものをやろうという目的からは枷にしかなっていないように思われる。