有栖川有栖『火村英生に捧げる犯罪』

火村英生に捧げる犯罪

　２００８年９月購入。１年２ヶ月の放置。犯罪心理学者の火村英生を探偵役とするシリーズ短編集。表題作はその火村宛に犯罪予告めいた挑戦状を送りつけた犯人との対決を描いた作品。他の収録作を見ると明らかであるが、元来このシリーズは火村という探偵役を据えてているものの、骨子となる部分はその探偵のキャラに依存したつくりとはなっていない。極端な話、探偵役は他キャラと代替可能である。しかしこの表題作は探偵と犯人の対決、という要素を前面に押し出し、のみならず動機面で火村に対する敵愾心を持つ人物としてその犯人を設定している。この点で、表題作は本書収録短編中でも異色作であるといえる。