マイクル・ムアコック『永遠の戦士エルリック5 夢盗人の娘』

夢盗人の娘―永遠の戦士エルリック〈5〉 (ハヤカワ文庫SF)

夢盗人の娘―永遠の戦士エルリック〈5〉 (ハヤカワ文庫SF)

 2006年11月購入。2年10ヶ月の放置。前巻で衝撃的なラストをむかえたかのように見えた白子の戦士エルリックと魔剣ストームブリンガーの物語が再開される。とはいえ第二次大戦前夜のドイツに舞台を移した本書前半の主役を務めるのは、フォン・ベック伯爵である。彼の家に代々伝わる<黒の剣>レーヴンブランドをめぐってナチスと対立し、地下世界へ逃げ、そこで夢盗人の娘、ウーナと出会う。エルリックの登場、活躍はこれ以降である。シリーズ読者はこういった構成や、そもそもの舞台世界の違いに面食らうであろうが、ムアコックの作る他シリーズを含めた多元宇宙観を鑑みれば妥当な処置なのかもしれない。20世紀前半のドイツという現実世界をも飲み込んだ多元宇宙でのシリーズ展開を素直に楽しみたい。