芦辺拓『月蝕姫のキス』

月蝕姫のキス (ミステリーYA!)

月蝕姫のキス (ミステリーYA!)

 2008年10月購入。10ヶ月の放置。高校生の暮林少年は偶然にも殺人事件に巻き込まれる。被害者が殺された時間と状況を考えた暮林は、容疑者としてクラスメイトの少女の存在を俎上に上げることに。その少女、行宮美羽子に対してほのかな恋心を抱いていた暮林は、事件の解決に乗り出すのだった。
 主人公の少年と、ヒロインの少女の関係が探偵―犯人という関係であることをにおわせつつ、中盤ではそのヒロインが何者かに誘拐され、主人公は救出におもむく、という展開も見せる。本書は二人の関係はミステリレベルでは対立関係、青春小説レベルでは恋愛関係という二層構造でもって成立している作品である。ところが、どちらの軸に主眼を置くにしても決定的に盛り上がるシーンはないまま物語は終了してしまう。今後続編が書かれるのであれば評価の仕方も変わってくるのだろうが、現時点では消化不良の印象が否めない。