藤岡真『七つ星の首斬人』
- 作者: 藤岡真
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/07/29
- メディア: 単行本
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本書にはこの作者らしい要素がふんだんに盛り込まれている。作者のサイトにしばしば足を運ぶ者にとっては、七角形のエネルギー云々のような胡散臭い理論を取り上げたトンデモ本を紹介することはご存知だろうし、居合いの達人が登場するあたりは作者本人が武道をたしなむことを連想させる。語り手が怪しげな人物を追うシーンの情景描写はどことなく「笑歩」の成果がうかがえないでもない。このことから、こういった作者の持ちうる武器を作中にぶち込んだ作品ということも可能だ。語り手である作家の著作『五色金神殺人事件』が登場するが、珍品として話題に上がることの多い作者の問題作『六色金色殺人事件』をネタとして取り入れたわけで、これまた作者の持ちうる武器を利用したいえよう。
肝心の本書の内容であるが、ふんだんにちりばめられた伏線が徐々に回収されていく、その過程を楽しむべきであろう。もっとも、連続首斬り殺人事件やその背景にある『虚無への供物』オマージュ、密室トリックといった派手派手しい要素が多いにもかかわらず、そして伏線回収が美しさを備えているにもかかわらず、全体的に盛り上がりに欠けたままラストを迎えてしまっている感がある。『ゲッペルスの贈り物』のようなけれんみや、『六色金神殺人事件』のハッタリ、『白菊』のずうずうしさといった突き抜け感が不足しており、これらに比して小粒な作品という印象になってしまっている。とはいえ、超久々の作者の新作ということで、楽しく読めました。次回作にも期待したい。