加藤実秋『インディゴの夜 ホワイトクロウ』

インディゴの夜 ホワイトクロウ (ミステリ・フロンティア)

インディゴの夜 ホワイトクロウ (ミステリ・フロンティア)

 2008年11月購入。9ヶ月の放置。シリーズ3作目ともなると、作中における登場人物たちのふるまいも作者の掌中にきっちりと収まった感がある。これまではクラブ・インディゴのオーナーである晶の視点でエピソードが語られてきたが、本書では収録された4つの話のうち前半3つがそれぞれ話の中心にあるホストたちの視点が用いられている。「神山グラフティ」では惚れた女にホストという自分の生業を隠しているジョン太が、彼女の働く定食屋が迷惑をこうむった事件を解決しようとする。「ラスカル3」ではアレックスが通うキックボクシングジムの会長が拉致られたので救出に向かう。「シン・アイス」では犬マンの友人であるホームレスの少年がやはりホームレスである恩人を救おうとするのに手を貸す。4つ目の「ホワイトクロウ」では晶視点に戻り、クラブ・インディゴ改装に際に起きたトラブルの話になる。ここで前半でそれぞれのホストが巻き込まれた事件にまつわる出来事が微妙に絡んでくる。連作ミステリ、という視点で見た場合、その演出はさほど印象的なものではないが、クラブ・インディゴをめぐる人物たちの話としてみると非常にまとまりのあるものに見える。したがって、本書あるいは本シリーズをそのような登場人物たちの動きや心情に焦点をあてて読めば、それなりに楽しめるはずだ。