折原一『倒錯のオブジェ 天井男の奇想』

 2002年10月購入。6年9ヶ月の放置。貸しアパート業を営む老婆が抱く妄想――「うちの天井裏には天井男が棲みついているんじゃ」。この老婆と老婆の住むアパートの二階に部屋を借りたわけありの女性、一人暮らしの老婆を気にかける役所の職員、そして天井男。物語はこれらの人物の視点でかわるがわる進んでいく。読者は天井男の正体は何者なのか、そしてなぜ天井裏に棲みついているのかということが気になるであろう。加えて二階に暮らす女性・直美が見舞われるトラブルの行く末が語られることになる。基本的にこの二つの軸でもって読者の興味を引っ張っていくことになる。サスペンスたっぷりの展開や頻繁な視点の変更で読み手を幻惑する手法は作者ならではのもので、作者に対する期待値を十分に満たしてくれる作品といえる。