山田正紀『神君幻法帖』

神君幻法帖

神君幻法帖

 2009年2月購入。5ヶ月の放置。山王一族と摩多羅一族は、後の徳川三大将軍家光とその側近の命により、一族の存亡をかけた殺し合いをすることとなった。敵味方総勢十四人、いずれも幻法の達人である。
 幻法とは作者が作り上げたガジェットで、いわく、忍法の元ネタとなった概念である。そして忍法といえば山田風太郎忍法帖を真っ先に連想するであろう。本書のタイトルと内容は純然たる山風忍法帖リスペクト、それも『甲賀忍法帖』の、だ。ストーリーの主観となる部分、幻法に用いられる奇想など、山風ファンが受けるであろうワクテカ感はハンパないものがあるし、それなりの満足感も与えてくれる。ただし、あくまでそれはリスペクトであり、元ネタ越えを果たしたとはいえない。もっとも、それは比較対象たる元ネタ作品が傑作中の傑作と呼ばれうるものであるからであり、いわば比較対象が巨大すぎる。それ抜きに見た場合の本書の面白さもまた、ハンパない。こういう純粋に楽しませてくれる作品は大歓迎である。忍法帖リスペクトの続編はまだ構想があるらしいので、続刊を望む。