大倉崇裕『警官倶楽部』

警官倶楽部 (ノン・ノベル)

警官倶楽部 (ノン・ノベル)

 2007年2月購入。2年5ヶ月の放置。主人公の所属するグループは警察マニアの集まりで、マニア心が高じてこっそり手に入れた制服や盗聴、鑑識グッズ、そしてマニアならではの詳細な知識を活かして世の悪を正していく。その名も「警官倶楽部」。彼らは借金づけになった仲間を救うため現金強奪をたくらむ。計画は無事に成功するも、直後に別の仲間の息子が誘拐される。せっかく手に入れた現金は身代金として使われることに。現金再奪取をもくろむ「警官倶楽部」メンバーであったが、一方で借金返済を迫る闇金の連中や、本来の現金の持ち主であった駆ると宗教団体も絡んでくるのだった。
 大金をめぐり暴力的な男どもが複雑に絡み合うというプロットは馳星周を思わせるが、本書では馳星周作品であれば不可欠であるノワール臭が微塵もしない。また、軽妙なノリは伊坂幸太郎、特に『陽気なギャングが地球を回す』あたりを連想させるが、やはり伊坂特有のオサレ臭とは無縁だ。大倉崇裕は前二者のような一目ではっきりとわかる激烈な個性のある作家とはいえない。とはいえ二転三転するプロットを丹念に作り上げ、しっかりと伏線を張り巡らせ、サスペンスフルでありかつユーモアも忘れないという本書の出来はなかなかのもの。作者の力量を十分に発揮した良作であるといえよう。