田中啓文『忘却の船に流れは光』

忘却の船に流れは光 (ハヤカワ文庫JA)

忘却の船に流れは光 (ハヤカワ文庫JA)

 2007年5月購入。2年1ヶ月の放置。神と悪魔の存在が人々に信じられている世界で、<聖職者>のブルーの数奇な運命を描いた壮大なSF叙事詩。神学的なタームをSF風に味付けし、本格ミステリなミスリードを用いて最後はきれいに着地している作品だ。骨太なストーリーでありながらも軽妙な文体のためボリュームの割りにさくさく読める。田中啓文節全開のスカトロ描写満載のため、力作ではあるが万人にはお勧めしにくいのが難点。