柄刀一『殺人現場はその手の中に』
殺人現場はその手の中に―本格痛快ミステリー (ノン・ノベル―天才・竜之介がゆく!)
- 作者: 柄刀一
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2005/02
- メディア: 新書
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その代わり、肝心のミステリ要素――すなわち、魅力的な謎とその解明に関しては安心のクオリティだ。ガラスに浮き上がった「死」の文字と、盗難事件の容疑者の事故死を絡めた第1章「瞳の中の、死の予告」。一風変わったアルファベットパズルが導き出す殺人犯のアリバイ崩しの第2章「アリバイの中のアルファベット」。高級なグラス製品が衆人環視の中で消失した第3章「死角の中のクリスタル」。伝統的な神事を録音したテープに残された驚愕の真実を描いた第4章「溝の中の遠い殺意」。そして第5章、殺された被害者が本に残した不自然な血痕の秘密「ページの中の殺人現場」。いずれの事件にも芯となるトリックが用意されており、濃密かつ堅実な連作短編ミステリとして仕上がっている。また、本そのものにも遊び心ある仕掛けが用意されているのだが、あくまで遊び心であってそれほど効果をあげてはいないように思える。