冲方丁『ばいばい、アース』1〜4

 4冊まとめて。

ばいばい、アース 1 理由の少女 (角川文庫 う 20-1)

ばいばい、アース 1 理由の少女 (角川文庫 う 20-1)

 第1巻『理由の少女』。2007年9月購入。
ばいばい、アース 2 懐疑者と鍵 (角川文庫 (う20-2))

ばいばい、アース 2 懐疑者と鍵 (角川文庫 (う20-2))

 第2巻『懐疑者と鍵』。2007年10月購入。 第3巻『爪先立ちて望みしは』。2007年11月購入。
ばいばい、アースIV 今ここに在る者 (角川文庫)

ばいばい、アースIV 今ここに在る者 (角川文庫)

 第4巻『今ここに在る者』。2008年2月購入。

 1年4ヶ月〜9ヶ月の放置。舞台となる世界に生きる人々は、猫の姿をまとった「月瞳族」や兎のような「長耳族」といったように何らかの外見的特徴を有している。そんな中にあって主人公のラブラック=ベルただ一人は何の特徴もない「のっぺらぼう」であった。ベルは自分と同じ姿をした仲間を探すため旅に出る決意をする。
 というように、本書はいわゆる自身のアイデンティティを確立させるための自分探しの物語のフォーマットを前面に押し出している。にもかかわらず、ベルはなかなか旅立たない。放浪者の資格を得るための試練に望み、敵と戦い、友人を作り、王とまみえ……ひたすら自身の所属する王国内での話が続く。
 きっちりと作りこまれた世界観と、生き生きとした登場人物たちが織り成すバトルシーン等は見ごたえがあり、読み応え十分の作品ではある。そしてむろん、最終的にはこの自分探しというテーマはきっちりと消化される。だが、外見的には舞台設定が示す指向と実際の展開が著しく異なる奇妙な物語となっている。