歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』

葉桜の季節に君を想うということ (本格ミステリ・マスターズ)

葉桜の季節に君を想うということ (本格ミステリ・マスターズ)

 2003年3月購入。6年2ヶ月の放置。かつて探偵をやっていたことのある成瀬は、友人のたっての頼みで再び探偵めいたことをすることになる。霊感商法にはまっていた老人が事故死したことに関する調査だ。はたして本当に事故だったのか、問題の霊感商法を扱う会社を探ることに。一方で女好きである成瀬はあるとき麻宮さくらという女性に出会うのだが……
 トリックのインパクトが有名で、それゆえ未読時点でネタバレ被害にあうことの多い作品である。かくいう私もメイントリックを知ってしまった状態で読み始めた。したがって肝心の部分で驚愕することすこぶる薄かった。にもかかわらず、十分に楽しめた。その仕掛けを成立させるために施された技巧や、単にトリック成立のみを目的にしてストーリーを犠牲にするといったこともなく、波乱万丈のプロットが用意されていたりと、物語としての根幹が非常にしっかりしていたからだ。「本格ミステリ大賞」はともかく「このミス」や「文春ミステリ」にまで評価されたのもうなずける作品だ。「トリック知ってるから全然面白くねーよwww」という人は推理小説を読まないでパズルゲームを楽しんでやがればいいと思います。