太田忠司『まいなす』
- 作者: 太田忠司
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2008/11
- メディア: 単行本
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この予言をめぐる出来事が物語の本流で、それに絡む主人公・舞の心情が丁寧に語られる。そもそも作者は「狩野俊介シリーズ」や「新宿少年探偵団シリーズ」等、少年少女をストーリーの主眼に置いた話を得意としている。そこで描かれる子どもたちの姿は、大人と比して決して幼稚すぎることはなく、逆に子どもたちが主役だからといって妙に大人顔負けな言動の持ち主というわけでもない。いわば等身大な少年少女の姿で登場する。それにあわせて、大人たちも不自然に卑小化・矮小化された汚いだけの存在と描かれることもなく、単なる子どもたちの障害や理解者という役割に終始することも少ない。すなわち、大人もまた等身大の存在として登場し、この子どもと大人をきちんと配置することによりきわめて健全な世界を作り上げているのだ。本書もその例外になく、主人公の舞は少女らしい悩みを抱え、それを助ける大人や障害となりうる人物と関わり、友人やボーイフレンドと時にはぶつかり合い時には助け合い、結果悩みを乗り越えていく。少女のビルドゥングス・ロマンとしては王道中の王道といってもよい作品となっている。この手の話を書かせると、さすがに手堅いです。今流行の平仮名四文字タイトルも、なんとなくほほえましいです。