MYSCON10参加レポ

 23日に行われたMYSCON10に参加してきました。昼の部はまず最初に湊かなえのインタビュー。デビュー作『告白』から想像されるものとは程遠い、かわいらしい感じの方でした。投稿歴が単純にミステリ一本ではなく、川柳→ドラマの脚本→小説だということです。また、「ミステリ」と言うキーワードから連想される多数の単語――復讐、殺人、密室といったものから取捨選択し物語を構築していくという創作法を用いているということで、このキーワードをミステリ的なものにこだわらなければ作風の幅はミステリ以外にも広がっていきそうな気がします。今後に注目したい作家です。

 小路幸也インタビューはヒット作『東京バンドワゴン』シリーズをメインに、数多くの著作を年代順に取り上げていく、といった感じで行われました。メフィスト賞デビュー作家には講談社からシャーロック・ホームズ像がもらえるらしいのですが、そのときに在庫があるときに限るらしく、在庫に恵まれなかったデビュー当初はもらえなかった。結局後にいただいたのだが、浅暮三文はまだもらってないのではないか、とのこと。また、ハイペースで精力的に新作を出し続けているにもかかわらず「スランプらしいスランプはない」とのことです。

 ミステリ歌会は死体やダイイング・メッセージといったミステリ的なお題をもとに短歌や川柳を作りましょう、といういかにもMYSCONならではの企画でした。


 夜の部で参加した企画は全体企画の「九人と君で十人だ」。会場にいる参加者中、十人に当てはまると思われる事項を三つ考え、その誤差の少ないチームが優勝するというもの。私のチームの質問は以下の通り。

  1. 本格ミステリ・フラッシュバック』を買った人
  2. 古野まほろの著作を二作以上読んだ人
  3. 先日放送されたアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズの新作「笹の葉ラプソディ」を見た人

 一応、チームにゆかりある問題にしましょう、ということで同じチームだった『本格ミステリ・フラッシュバック』の著者の一人・フクさんにちなんだ1、古野まほろ『天帝のはしたなき果実』読書会の司会を務める蔓葉さんにちなんだ2、ハルヒの作者谷川流の中の人はアレだし、『涼宮ハルヒの消失』はミステリだという杉本@むにゅ10号さんの意見を尊重し3ということになりました。結果は3位。

 もうひとつ参加したのはミステリ・ボードゲーム「Clue」。殺害された人物・場所・凶器を当てるゲームです。勝てなかったけど楽しめました。慣れてきて、かつ素面であればもっと楽しめたのではないかと思います。

 それ以外の時間は主に他の参加者さんといろいろしゃべってました。詳細については個人的な交友なので、個人的なしかるべき場所に書こうかと思います。ただ一点、昼の小路幸也インタビューで話題になった「浅暮三文はホームズ像をもらってないのではないか」については、夜の部に参加されていた浅暮三文にいわく「宇山さんの亡くなる半年くらい前に、いただいた。形見分けのようだった」とのことです。また「蘇部健一はもらってないちゃうんかなあ」とも言っておられました。


 普段お会いすることの少ない人、あるいは始めてお会いする方との交流ができて個人的には非常に充実したイベントででした。しかし、個人的な部分を離れると問題点が目に付くイベントであったとも思います。

 そもそも、ゲストの発表、読書会の仮題本、その他企画といった参加者に対する情報の提示が遅かった。貴重な休日を、誰が来るのかあるいは何が行われるのか不鮮明なイベントにいったいどれだけの人が参加したいと思うでしょうか? リピータの私はある程度勝手がわかっていたので、そのような状態でも申し込みましたが、初めて参加しようという方やMYSCONにさほどなじみのない方は少なからず躊躇したのではないでしょうか。結果、参加者はリピーターが多く、内輪的な雰囲気が出来上がっていたような気がします。もちろんそういった常連参加者がMYSCONの色を作っている部分もあり、その色になじむことのできるコアなメンバーのみが参加すればよい、という考え方もあるでしょう。実際にネットミステリ界、という面で見れば毎年コアなメンバーが集い、MYSCONらしさを作り上げていっていると思います。反面新規メンバーは数えるほどで、おなじみの面子が年に一回集まる同窓会的なイベントといった雰囲気になってしまっている。オフ会にほとんど参加しない田舎者の私は年一回の同窓会も貴重でそれがあること自体非常にありがたいのですが、同時に寂しさも感じます。より多くのミステリ愛好家と交流したいと望む身にあっては、より開かれたイベントであって欲しいと思います。

 ……と苦言を呈しましたが、やはり楽しかったことは間違いないし、そういう風に思えたのはスタッフの皆様の頑張りがあってこそだと思っているのも事実です。お疲れ様でした。そして楽しい場をご提供いただきありがとうございます。来年も参加したいです。