栗本薫『グイン・サーガ126 黒衣の女王』

黒衣の女王 グイン・サーガ126 (ハヤカワ文庫JA)

黒衣の女王 グイン・サーガ126 (ハヤカワ文庫JA)

 2009年4月購入。1ヶ月の放置。夫であるアルド・ナリスを失った女王リンダの元に、イシュトヴァーンが求婚に訪れる話。そもそもアルド・ナリス死亡の原因を作ったのはイシュトヴァーンであり、亡夫の敵である男と再婚するということ自体考えにくいことだ。とはいえ、イシュトヴァーンもかつてはリンダと恋仲だったこともあり、そのイシュトヴァーン自身の人を惹きつける性格もあってかリンダの心は揺れ動いていく……
 本書で重要なのは若くして最愛の夫を失った女の心のあり方にはない。100巻を越える物語で主人公グインに並ぶほどのカリスマ性の持ち主であったアルド・ナリスの影響力が薄れてきている、という点だ。死してなお存在感を示していた人物を最も愛する女性の心の変化は作品世界におけるマンパワーのバランスを大きく変えつつある。今後の重大な転回点になりかねない巻だ。