湊かなえ『少女』

少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)

少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)

 2009年1月購入。4ヶ月の放置。転入生から友人の自殺を目撃した、という話を聞いた女子高生二人が、「人の死ぬ瞬間を見てみたい」と思うようになり、一人は病院のボランティアを、もう一人は老人ホームの手伝いを始める。二人がそのような行動に出たのはむろん、「人の死を目撃できる可能性があるから」という、ゆとり脳全開の理由からで、そのゆとりならではの人を思いややらない、そのような感情に思い至らない傲慢な思考法によって展開されるストーリーはデビュー作『告白』を想起させ、読者に、「すわ、またしてもメシウマ小説か」――などと思わせるものの、意外と穏当な展開に。ただし、全体的なまとまりはよく、かつ、作中で提示された事項の処理も順当。加えて読みやすい語り口もあり、デビュー作のようなインパクトには欠けるものの、作品単体としての完成度はなかなかのものだ。物語全体の構成も巧みであり、次作以降も楽しみな作者だ。