菊地秀行『トレジャー・キャッスル』
- 作者: 菊地秀行,鈴木康士
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/03/25
- メディア: 単行本
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ミステリーランドのシリーズには「わたしが子どもだったころ」と題されたあとがきがつきもので、本書にも当然そのあとがきが設けられている。そこで語られる極めてネガティブな港町は、千葉県銚子市のことだ。関東の東端という地にあって文化的には絶望的なほど得るものが少ないところであるのは菊地のまさに語るとおりで、そして今現在ではさらに絶望的なこととなっている。数少ない娯楽として菊地は映画をあげている。当時はポルノ専門も含めて映画館が数館あったからだ。今ではすべてつぶれて一館すらない。市内唯一の百貨店はつぶれ、市立病院は閉鎖し、莫大な借金を抱え、自転車よりも遅い鉄道も赤字で、それを解消するために煎餅を売っている……田舎暮らしについて、「これ以外の道(=小説家になること)を辿れば、何をやっても上手くいかず、挙句の果ては犯罪に手を染めかねなかったろうと思う」という、菊地のあとがきはあまりにネガティブで、故郷に対してあんまりな言い方に思えるかもしれない。だが、こと文化面に関しては残念ながら菊地の言うとおりである。本当に残念ながら。