蒼井上鷹『まだ殺してやらない』

まだ殺してやらない (講談社ノベルス ア AF-01)

まだ殺してやらない (講談社ノベルス ア AF-01)

 2008年6月購入。10ヶ月の放置。ノンフィクション作家・滝野は妻を殺した犯人を捕らえんと調査に乗り出す。その甲斐あってか、容疑者「カツミ」は逮捕される。しかし、巷では似たような事件が相次ぎ、しかも真犯人らしき人物から滝野へ挑発のメッセージが届く……
 事件の周辺事情を描く構成はトリッキーで、いかにも作り物めいたミステリという体裁を成している。この手の「ミステリ」を好む読者もいるのだろうが、いかんせん構成・テンポ・演出といった小説として魅せる部分が未熟で完成度は高いとはいえない。最後の「続きはWEBで」的な趣向も、意図としてはユニークだが、わざわざWEBページを用意してまでやるほどのものではないような気がする。もっとも、作者らしい登場人物黒さ、悪意といったものは本作品にも十分に表れており、作者の持ち味は発揮できているといえる。