桜庭一樹『GOSICKs3 秋の花の思い出』

 2007年4月購入。1年8ヶ月の放置。シリーズ短編集の第三弾。収録作はすべて花及び花言葉がモチーフとして用いられており、短編集とはいえ一作品としての色合いに統一感が生まれている。そしてこれらのモチーフは作中でいずれも印象深く登場する。白い薔薇の「純潔」、紫のチューリップの「永遠」、黒いマンドラゴラの「幻惑」、黄のエーデルワイスの「思い出」……これら花言葉が象徴するそれぞれの物語に登場する男女の愛の形は、そのまま本書の主人公二人――ヴィクトリカと久城の境遇と照らしあわされる。ストーリーは久城視点で進行するゆえ、内面がダイレクトにうかがい知れるのはその久城のみであるが、ヴィクトリカのほうも推して知るべし。二人の男女の関係を描いた好短編といえよう。