ほしおさなえ『ヘビイチゴ・サナトリウム』

 2003年12月購入。5年の放置。西山海生の通う中高一貫の女子高で、美術部の先輩が屋上から飛び降りて自殺した。自殺に至った理由が取りざたされる中、今度は男性国語教師が同じく屋上から身を投げた。二人の関係がいろいろ噂となるが、どうやら教師は作家志望で雑誌に投稿していたのだが、その作品に女生徒が協力していたらしい。その作品は新人賞を受賞したのだが、盗作の疑いがあがる。二人の自殺の背後にはなにやら不穏なものがあるようだが……
 ストーリーを追っていくうちに密室殺人が浮かび上がってきたりと、本書の体裁はまさしく本格ミステリのそれである。しかし、最大の読みどころはミステリ的趣向ではなく、自殺という発端、海生たちが事件を探ることによって浮かび上がってくる被害者像や周囲の少女たちの心情、そして結末で明らかにある動機めいたもの……作者の描く少女たちの繊細さであろう。繊細さの表現力の源を、作者が元来は詩人であることに求めるのは安易であろう。しかしそこで培われた言語感覚や心の襞を読み取り活写する能力は明らかに本作に活かされていると言える。