黒田研二『幻影のペルセポネ』

幻影のペルセポネ

幻影のペルセポネ

 2004年9月購入。4年2ヶ月の放置。フリーライターの来栖のもとにネットゲーム<ヴァーチャル・プラネット>が突然届けられた。<コンピュータ・マガジン社>編集長である近藤のすすめで来栖はゲームを始めてみたのだが、いきなり不可解な殺人事件に遭遇する。どうやらゲーム内の世界<ペルセポネ>には殺人鬼が存在するらしい。偶然知り合ったメグと名乗る少女と事件の捜査に乗り出すのだが、事態は混沌としたままだ。また、現実世界で過去に起きた不幸な事件――来栖の尊敬するプログラマが殺された事件が一連のネトゲ上の出来事に絡んでいく……
 伏線回収のために用意された展開が強引で、物語を展開していく上での手際は決してよいとはいえず、作品そのものの完成度は高くない。
 しかし、現実世界とネット上の世界、二つの事件を上手く絡めている。また、単なる犯人当てだけでなくネットの特性を活かした<中の人>の正体探しの要素を複雑に取り込んでおり、二重の意味でのフーダニットが堪能できる展開は非常に面白い。ネットを用いたミステリとして読む上では十分に楽しめる作品。