石持浅海『BG、あるいは死せるカイニス』

BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)

BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)

 2004年11月購入。4年の放置。石持浅海は舞台設定にこだわる作家である。本書以前の作品はいずれもクローズド・サークルを形成させんがために凝った状況をを用意している。これらは本格ミステリおける犯人当てをスムーズに進行せんがための処置であったといえよう。本書は同じように舞台設定にこだわった作品であるのだが、「女性しか生まれない世界、男性は女性が男性化することによって初めて生まれる世界」という一空間にとどまらない、物語を展開するに必要な世界そのものが用意されている。このような舞台設定の仕方はそれまでの作品と同様、本格ミステリ的展開を進めていくのに必要なものであったことは間違いない。しかし本書では設定そのものがロジックを展開する上で必要なものとなっており、設定それ自体が(石持的)本格ミステリに奉仕している、というようなものとなっている。この方法論は後の『人柱はミイラと出会う』でも用いられており、作風の幅を広げたともいえる。