栗本薫『グイン・サーガ123 風雲への序章』

風雲への序章―グイン・サーガ〈123〉 (ハヤカワ文庫JA)

風雲への序章―グイン・サーガ〈123〉 (ハヤカワ文庫JA)

 2008年10月購入。1ヶ月の放置。シルヴィア王女がらみの問題を片づけ、アキレウス大帝の後継問題にも結論を出したケイロニア、一方ゴーラのイシュトヴァーンは、対ケイロニア、パロ対策として意外な行動をとろうとしていた。
 ということで、物語的には一区切りをみせ、新たな局面を迎えようとしている。作者があとがきで言うように、今後は三国志的な色合いが強くなってくるのであろう。しかし各国の人物を描写する群像劇よりも、絞りに絞った数少ない英雄にスポットを当てた書き方が作者には合っているようで、国同士の興亡を描いたスケールの大きさに対して描かれる登場人物はきわめて少ない。あくまで本書は、グイン、イシュトヴァーン、リンダという初期の中心人物とそのきわめて卑近な周辺人物のみの物語で、その意味では今後の展開において三国志的群雄像を期待すると肩透かしをくらいそうだ。