山田正紀『私を猫と呼ばないで』

私を猫と呼ばないで

私を猫と呼ばないで

 2007年12月購入。10ヶ月の放置。単行本250ページに14の短編(すなわち、1作あたり20ページ前後)を収めた短編集。手軽に読める長さであり、文章自体も読みやすく、かつ短い中にもきちんと筋の通った話を作りオチを設けている。どちらかというと重厚かつ長大な作品を描くイメージの強い作者であろうと思われるが、本書では短編における達者ぶりも示している。
 収録作で目を引くのは、シングル・マザーや離婚の危機にある夫婦といった、一部で「負け犬」と称される人物を用いた作品群が多いことだ。しかしそのような人物の扱い方は多彩で、冒頭の「消えた花嫁」における結婚間近に控えた女性の心理、「親孝行にはわけがある」でのシングル・マザーの心の強さ、「猫と女は会議する」の母子の心情、「津軽海峡、冬景色」の中年男性の過去の恋愛話とそのオチ等々……
 それ以外にもOLが遭遇した事件からトンデモな展開を見せる「女はハードボイルド」や我流筑前煮厨大歓喜のレトルト筑前煮開発話「恋の筑前煮」などユーモアあふれた作品あり、「窓の見える天窓」のような不思議な雰囲気の話ありと、いろいろ楽しめる一冊だ。