浦賀和宏『上手なミステリの書き方教えます』

上手なミステリの書き方教えます (講談社ノベルス)

上手なミステリの書き方教えます (講談社ノベルス)

 2006年6月購入。2年4ヶ月の放置。シリーズ三作目の本書はミステリとしての体裁をとってはいるものの、それはあくまで八木のコンプレックス丸出し・ルサンチマン全開の行動や心情を描写するための材料でしかない。前二作では事件と彼らの関わりはそれなりに密接であったものの、八木の心情が本格的に動き出した今作では事件との絡みは非常に希薄なものとなっている。純菜の前で普段のいじめられっこの姿を見られてしまい、惨めな思いをしている八木と、それに対するカタルシスというのが本書の読みどころであり、その部分は事件はなくとも成り立つ。本シリーズの主眼がキモオタ八木剛士による美少女松浦純菜への分不相応な恋という点に置かれており、それを明確にするという意味では功を奏した作りであるといえるが、やはり事件を登場させるならばもっと濃密に絡ませてほしかった。