伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』

フィッシュストーリー

フィッシュストーリー

 2007年1月購入。1年8ヶ月の放置。二匹のオオカミが逃げ出し、うち一匹はそのまま戻らないままの動物園の元飼育係の話「動物園のエンジン」、行方不明の男を探して訪れた山奥の村で催される昔ながらの風習に巻き込まれる話「サクリファイス」、なかなか芽の出ない新人バンドの最後のレコーディングと子供のころから正義の味方になることを志していた男が巻き込まれたハイジャック事件のつながり「フィッシュストーリー」、空き巣とその彼女が結果の残せない野球選手宅に忍び込んだがために生じた事件「ポテチ」。短編四本を収録している。本書以前にも短編集を発表している伊坂だが、それらはいずれも同一設定同一コンセプトの存在した連作もので、純然たるノンシリーズ短編集は本書が初となる。軽妙な語り口、洒脱な会話、巧みに張り巡らせた伏線、きれいにまとめられた構成……など、相変わらず小説作りの上手さ・器用さは見られるものの、受ける手ごたえそのものは非常に軽い。非常に優等生的である。多少は不恰好でもよいのでもう少し手ごたえのある作品を書いていただきたい。