ジョン・スラデック『見えないグリーン』

見えないグリーン (ハヤカワ・ミステリ文庫)

見えないグリーン (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 2008年9月購入。1ヶ月弱の放置。ミステリ好きの集まり「素人探偵会」が35年ぶりに再開することになった。ところがメンバーの一人であるエドガー・ストークスが密室状況下で殺害された。どうやら彼は以前からミスター・グリーンなる人物に命を狙われていたらしい。探偵サッカレイ・フィンは「素人探偵会」のメンバーの一人、ドロシア・フェアロウの依頼で事件捜査に乗り出す……
 事件の渦中にある「素人探偵会」の面々は元軍人であったり画家であったりもと警官であったりと、いわくありげな経歴の持ち主で、いかにも事件には裏があるだろう、と予期させる。事実、密室殺人で幕を開けた事件はその後、それぞれのメンバーのもとに小事件が起き、その現場には虹の七色に関した色が残される、という演出めいた出来事が発生する。読者は明らかに犯人による非日常的発想による独特の論理の存在を抱くであろう。しかしスラデックはその視点をあっさりときわめて日常的レベルに落としてみせる。このミスリードの妙こそ、本書の読みどころであろう。